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422. 間質性肺炎における「近藤理論」か

本間行彦医師の著書「特発性間質性肺炎のすべて」を、7,344円で購入した。某ブロガーさんもかつて記事にまとめておられたが、以下は私の考察である。

臨床医が自身の経験を元に書いている内容であり、科学的なアプローチをしたエビデンスデータの裏づけはない。行間を読むに、過剰なステロイド投与が奏功せず副作用に苦しむ患者を多く診てこられたことで、漢方薬へ傾倒していかれたのだろう。
抗がん剤の罪を糾弾した「近藤理論」に近いものを感じた。

主張骨子:
1. IIPsは2種類に分類する(粉塵などの暴露でなければ、すべて膠原病由来)
2. すべては間質の炎症から始まる。線維化はむしろ炎症が「治った証」
3. KL-6をマーカーとして使う。漢方治療で、この数値は抑制できている。そして事実、私の患者は長生きしている

私からの反論:
1. IIPsの国際分類を真っ向から否定している。膠原病由来の間質性肺炎は、「膠原病」が原因と分かっているわけで、すなわち特発性ではない。国際分類でも日本のガイドラインでも、膠原病由来の間質性肺炎はIIPsに含まれない。

びまん性肺疾患の分類(ATS/ERS国際分類)
fig1.png

2. IIPsの中でも過半数をしめるIPF(特発性肺線維症)は、ステロイドが奏功せず、画像でも炎症を認めないことが多い。
IPFの国際的(および日本でも)ガイドラインでは、IPFは肺胞上皮細胞の「傷害」が契機になるとされ、従来の「炎症」は否定されている。これにより、ステロイドや免疫抑制剤はIPFには使われなくなった。
*tatiさんがBOX内にアップロードしてくれている資料「特発性肺線維症の新規治療薬」(2016) にも明記されている。

3. KL-6を指標として使用しているのは日本独自といっても良い。
有効なケースも多いが、IPF患者ではKL-6が高値(1,000以上)になることがないまま、線維化だけが進み、肺活量が低下し続ける人が少なからずいる。このような患者にはKL-6は病状進行の目安にはならない。

以上が本間医師の本への考察だ。

私自身は、急性期や劇症期には効能が薄いとはいえ、慢性期における漢方薬の効能には期待している。
一例が丹参である。
以下の論文を「記事172. サルビアノール酸B」で紹介しているが、多分実際に読まれた方は少ないだろう。
“Salvianolic Acid B Attenuates Experimental Pulmonary Fibrosis through Inhibition of the TGF-β Signaling Pathway,“

研究者の心意気の部分は紹介していなかったので、ここに訳してみる。
『肺線維症は進行性の致命的な病である。過去の研究から”益气活血”の漢方薬に全身性強皮症(全身の皮膚や臓器に線維化が起こる病、膠原病のひとつ)に対して治癒効果があることに着目。この研究の目的は、”益气活血”の治癒効果のある主たる成分を特定し、その作用機序と、肺線維症における治療効果を調査することである』

なお、全身性強皮症に対しても、世界的にニンテダニブの認可が始まろうとしていることを追記しておく。


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コメント

膠原病

ゆりりん様
いつも深い分析に感服しています。私も同書を購入し、読んでおりました。
気になったのは、ご指摘の膠原病由来に関する記述です。
私は、肺の自覚症状が出る数ヶ月前に、軽いながら右足首に経験したことのない痛みを感じました。関節炎とは異なる痛みでした。歩行に問題はなく、押さえると気づくレベルでした。
その後、肺に自覚症状が現れた頃、右足首の痛みは消失し、左手首に移行しました。
軽い痛みは増減を繰り返しながら、7ヶ月以上にわたり現在も続いています。
冷え性以外に、極端な乾燥肌ですし、口の渇き、左足ふくらはぎの筋肉痛、などもあります。
そこで、呼吸器の主治医は、膠原病の専門医を紹介してくれて、異なる視点を求めました。が、血液検査からも、手首のレントゲンからも全く炎症が観察されませんでした。
膠原病の専門医には、間質性肺炎とリウマチなどの症状は、発症順序が一律ではなく、今後顕在化してくる可能性があることを指摘され、その際に再訪するように言われました。
発病した頃、下痢ではないものの腸の具合が悪い時期とも重なりました。排出するガスが最悪でした。
腸内フローラのバランスが悪くなると、自己免疫不調になるとの情報がありますので、乳酸菌を含む、整腸剤も始めました。その後、腸の調子は良くなっています。
炎症反応が西洋医学的に顕在化しないレベルであっても、免疫機能不調がIPFに絡んでいるのではないか、とつい考えたくなります。
エビデンスがなく、感想に近い定性的な内容でお許しください。体験的には、本間行彦医師の視点にも捨てがたいものを感じています。

Re: 膠原病

やまやん様

膠原病というものも解明が途上であり、非常に包括的な疾患です。
さらに「自己免疫が本来の状態から逸脱した状態」により引き起こされる病気というような定義になると、外因性の病気以外のほとんどの病気がそれに含まれてしまうことになると思います。
記事411. ピレスパとオフェブと私の仮説 でも書いていますが、IIPsの複合型は、その原因の割合によって個々の顔を持つ。
300種類以上あるという説に賛同しています。

病気の分類により、治療方法が変わるべきであり、だからこそ正しい分類づけに意味があると考えます。
本間医師の場合、これをすっとばして、「すべて膠原病由来だ」と書かれており、積み重ねられてきた病因研究に逆行するものだ、と感じました。

漢方薬は長年の試行錯誤の上に成り立った、いわば経験則の完成形です。けれど、間質性肺炎という疾患自体の発見・定義は近年なされたものである以上、従来の漢方薬のレシピをそのまま適用することには限界があるだろうと考えています。
とはいえ、漢方薬の生薬の中には、多くの潜在性があると思います。
今後、ゲノム解明と歩調を合わせながら、その潜在性が再発見され、新たなステージに進むことを願ってやみません。

No title

ゆりりん様
同書は読んでいませんが北大保険診療所時代の症例(日本東洋医学雑誌(1998)記載)以降、現在もほとんど変わらず掲載されていて違和感を感じていました。
以前、本間医師の医師会報寄稿文を紹介した事もあり、本記事を書いて戴き納得できる部分が多くありました。
西洋、東洋の区分なく共存する医療を確立してほしいと思いました。
ありがとうございます。

Re: No title

tati様

本間医師が後ろ向き研究したIIPsは43例です。個人としては多いのでしょうが、これをもってIIPsが分かったというのには、少なすぎる症例です。
掲載症例が同じになってしまうゆえんでしょう。

従来の漢方薬が間質性肺炎に効くのであれば、中国人の同疾患の死亡率が低いはず。
そういうデータはまだ見つけられていません。
けれど漢方薬の薬効を現在の手法で解明しよう、という研究チームは散見されます。頑張って欲しいですね。

資料の共有化ありがとうございます。この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。

No title

ゆりりん様

大変、興味深く読ませて頂きました。
ゆりりんさんの反論、全く同感です。

読んだ直後は、色々もっともだと思ったのですが
しばらくして落ち着いて考えると偏った意見と
思いました。

近藤医師になぞらえていらっしゃるのは
とても面白いと思いました。

日本でだけ重んじられているKL-6
世界に広がらないのはエビデンスが
ないからでしょうか?

Re: No title

み~な様
ゲノム解明が終わってからライフサイエンスの世界が一気に開花しました。
近藤医師も、本間医師も、このような流れから取り残されていっているようにお見受けしました。
過去の成功体験が己の成長も縛る。み~なさんのように柔らか頭でないと、駄目ですね。

No title

こんにちは いつもながら鋭い指摘だと感じました。私は、この医師にお会いしたことがありますが、「静かな気迫」を感じさせる温厚な感じの方です。この病気に小柴胡湯の使用を好まれる点が、漢方学会には異論も少なからずあるようです。
漢方は各流派、各医師の独自の見解がやや優先する印象があり、そこが強みでも弱みでもあろうかと思います。客観性にやや乏しいようです。


メトホルミンは二週間ほど服用しました。250㍉を服用すると血糖値が下がりすぎるので、一日一回180ミリ程度を使っています。もちろん、自己責任での判断です。何か、結果らしきものが出ましたら、ご報告します。

Re: No title

Ken様

実際に本間医師にお会いになったよし、感想も含めて、ありがとうございます。
どこの世界でも「権威」と言われる方への反論は、難しいものなのでしょう。

「100万人に効かなくても、自分にさえ効いて病気が治れば良い」というのが患者の本音です。
けれどその確率は?何をもとに判断する?
エビデンスというのはその回答になるものだとと思っています。

メトホルミンは、シャーレとマウスでエビデンスがあるため、ヒトでも効果がある可能性が高いのでは、と考えています。
その後の結果を教えて頂ければ、大変有難いです。


No title

ゆりりん様
詳しくご教授いただいてありがとうございました。仰る意味に大変納得しました。
私は、起床時の倦怠感に困っており、なかなか運動する元気が出てきません。これではいけないとは分かっているのですが、ゆりりんさんは、運動をどのようになさっていますか。すでに記述されていたような気がするのですが、記事番号のみでもご紹介いただけると幸いです。これからもいろいろご教示いただけますようお願いいたします。

Re: No title

やまやん様

ご自身のFVCがどれくらいかによって、運動できる内容は変わってきます。
やまやんさんの現状を知らないので、どうなんでしょう?

「運動」というカテゴリに記事を分けていますので、何かの参考になれば幸いです。

肺機能が落ちている場合は、立って行う運動よりも座って行う運動、さらにそれがしんどいようでしたら、仰向きに寝て行う運動が良いようです。「笑うかど」のがみさんが呼吸リハビリに通っておられて、ご自身のブログに詳しく書かれているので、お勧めです。

No title

ゆりりん様

ブログの閲覧に関して初心者でして、野暮の事を伺い、申し訳ありませんでした。
きちんと整理されていることを理解しました。参考にさせていただきます。

本当にIIPか、と疑われる(医者もCT画像と見比べて驚いていました)かもしれませんが、FVCは4700程度もあり、165cm、51kgの体からは、140%程度の%FVCになります。肺活量の異常?な大きさは生来のもので、中学生の計測で気づき、学友に異常だとからかわれました。プールの潜水競争では、ちっとも水面に上がってこないので、心配になった先生に強引に引き上げられたものです。今は、これが幸いとなっています。

みなさんの症状を拝見していると実に千差万別である、と分かってきました。私が今、最も不快なのは、肺の違和感と倦怠感です。活動していると常時、もぞもぞしているのです。なぜか横になると直ります。医者からは、そんなことはないはずだ、と言われてしまいます。また、呼吸が浅くなり回数が多いことも家内に指摘されました。折角まだ大きな肺が残っているにも拘らず、有効に使えていないようです。呼吸リハビリで筋肉を鍛える必要がある、と感じています。

つい、ゆりりんさんのブログからコンタクトを取り始めさせていただきましたが、多くの方が情報を公開され、努力されていることを知り、大変勇気づけられました。私も頑張ります。

Re: No title

やまやん様

今後のこともありますから、ぜひブログを始められたらいかがでしょう。
IIPsと診断された経緯などをお書きになるだけでも多分10回分くらいの記事になりそうです。
誰もが最初は初心者で手探りですが、書いている間に楽しくなってきますよ。

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プロフィール

ゆりりん

Author:ゆりりん
1962年生まれの56歳、京阪神に生息。
2014年12月末にIPFの告知を受けてから、経過と探求の日々を綴っています