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413. ipsと臓器移植

ipsから作った心筋シートを、虚血性心筋症の患者を対象に、心臓の表面に移植する--この大阪大の臨床研究計画について、学内の審査委員会が承認したという記事を読んだ。厚生労働省に計画を提出して承認されれば、今年中にも治療研究が開始される。

立役者は、大阪大学医学部心臓血管外科の澤芳樹教授。
作成年と使用目的が不明だが、澤教授の講演資料で、分かりやすいPPTをネット上で見つけた。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai7/siryou5.pdf

この資料を読み解いてみる。
・もともと患者自身の筋芽細胞から細胞シートを作る研究をしていた
・そこへips研究所とのコラボが浮上→ips細胞を使えば汎用性が出て量産性があがる
・iPS細胞から作った心筋シートは、筋芽細胞の「サイトカイン療法効果」とともに、患者の痛んだ心筋と同化して徐々に「痛んだ部分を補充していく」ダブルの効果があると判明
・標準治療としての確立を目指したい

かたや肺の再生医療の研究はどうなのか。
2017年10月に、京都大学「ips細胞からII型肺胞上皮細胞の長期培養に成功した」という発表がなされている。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/171003_1.html
II型肺胞上皮細胞こそ間質性肺炎を惹起する細胞であり、ここを正常化できれば治癒が見えてくる。
けれど心筋シートのように、実施可能な方法が確立されるのは、まだまだ未来の話である。

進行性肺線維症の患者が、致死の運命から逃れられる唯一の方法は、現時点では肺移植手術以外にない。
しかし、脳死されたドナーの方からの片肺移植を受ける資格は60歳まで。
IIPsの平均発症年齢が60歳以上であることを考えると、肺移植の登録までこぎつけられる患者は、やはり限られた存在だ。

日本移植学会の2016年版の医療従事者向けのファクトブック http://www.asas.or.jp/jst/pdf/factbook/factbook2016.pdf 
によると
・2015年12月までの脳死・生体肺移植の累計数は、日本では464件
・2015年時点で、うち114人が移植後の合併症で死亡。脳死肺移植の成績は、5年生存率72.1%、10年生存率58.8%。国際標準をはるかに上回る好成績になっている

件数は思ったよりも少ない。そして肺移植のリアルは、本当のところはどうなのか、医療関係者からの情報では見えてこない。
頼みのブログも、移植が終わったあとからの生活が書かれていたりして歯がゆい。
「移植の細事はSNSに載せてはいけない」という念書でもあるのかと勘ぐっていたほどだ。

このたび「はち」さんというブロガーさんが、ご自身の移植への考え、移植手術体験を、勇気をもってブログに発表されていることを知った。
はちさんのブログ記事 「人口多能性幹細胞」を引用して、この記事を締めたい。
https://ameblo.jp/amebaamebaabemaabema/entry-12351261041.html

『iPS細胞によって造り出された肺組織を移植出来るようになるまでには、まだまだ数十年の時間が必要となることでしょう。ですが、今から数十年前の人達にとってみれば、「肺移植手術」そのものが「夢のような治療法」だったはず。「iPS細胞による夢」も、いつか必ず実現すると信じています。

現在の医学における、間質性肺炎の根本的な治療方法は臓器移植のみです。移植は脳死ドナーからの臓器提供に頼るところが主であり、そのような背景からネット上では「自分が生き永らえる為に人の死を願うのか」という意見も見受けられますし、臓器提供が間に合わず待機期間中に亡くなられてしまう患者が多いという問題もあります。(中略)

私の時代には間に合わなかったiPS細胞による臓器移植ですが、できるだけ早期に、できれば次世代には実用化されていることを切に願います。』



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追記: ないちゃんがコメントで書かれていた近赤外線による「がん光免疫療法」の治験開始のニュースを3.14の夕刊で読みました。本当によくご存知で、頭が下がります。私も頑張らなくては、と思います。
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コメント

No title

IPS細胞ってまだ網膜とか心筋シートとか平面しか出来てませんよね。理論上は立体も出来るはずですがなかなか難しそうですね。これさえ出来れば移植はもとより、新薬の治験を人体ではなく、それで行えばいいので医学は格段に進歩しますけどね。よくわからないのが肺気腫は主として肺胞がやられますが、肺胞は立体です。でも間質って平面ではないのでしょうか。平面ならなんとか出来そうな気もしますが・・・。でも肺胞がやられるのもまず肺胞の上皮細胞がやられることから始まるそうなので、上皮細胞は平面ですから、なんとかなると言えばなりそうですが、簡単に問屋は卸してくれないのでしょうね。IPSにつきものの発がんの心配は、まもなく実用化される日本人によるアメリカ発の光免疫療法で事前に解決出来そうです。

Re: No title

ないちゃん
お元気でお過ごしですか。
肺オルガノイド(立体)はシャーレでは培養できるようになっているようです。
けれど、より安定してオルガノイドを作れる量産技術は、というと難しそうですね。
IPF患者はただでさえ肺がんになりやすいので、がん化の問題が100%クリアしないと、リスクは高そうです。
ただ再生医療、ゲノム医療は研究対象として花形ですから、世界の頭脳が研究開発をすすめている。
だからきっと、20世紀には考えられなかった、ものすごいスピードで、医療における技術革新は起きていくはず、と信じています。

No title

今月から日本でも治験が始まる光免疫療法をIPSの立体が出来た時点で実施しておけば、癌化はほぼ防げるといわれています。
生物 化学 物理の三者が一体となった治療法は初めてで、ネズミに効いても人にはダメというケースも多々ありますが、これは細胞膜を破壊するので、生物共通だと思われるので期待できるのではないでしょうか。

Re: No title

ないちゃん
確かに、光免疫療法というのは、癌の細胞膜だけを破壊する画期的なアプローチのようですね。
うまく開発が進行して欲しいものです。

今日わ

主治医に言えばいいのでしようが、まだ日があるので聞いてください。
わたしは、生検で、原因がわかるけど慢性過敏性肺炎と診断されました。昨年の9月から痰を伴う咳が続いてました。それで、じゃあそろそろ、治療しようかとなったのですが、3月に入ってから、咳も、痰もなくなったのです。これってなんなんでしょうか?気持ち的には治療はまだ伸ばして、と思ってはいます。

Re: 今日は

mimi様
過敏性肺炎の場合は、季節要因がある場合もあるようですね。なので、夏の終わり頃から調子が悪くなるのかもしれません。
ただ原因も分かっている。と書かれていますし、原因は生活から排除されているのではないのでしょうか。
病理検査で診断もついている訳ですから、主治医の先生の治療方針に従われるのがベストだと思います。
抗線維化薬は、確かに副作用もありますが、それほど進行が急激でない時に、少量服用して体をならす、ということも考えられます。
お大事になさって下さい。

自分が生きている間は無理かも知れませんが早く実現して欲しいですね。
なかなか希望が持てない病気なので少しでも望みがあったら頑張れると思いますから。
薬のせいなのか夕方になると涙が酷く目が見えにくくなります。
お医者さんに言ってもどうでもならないので仕方ないんでしょうねきっと。

Re: タイトルなし

はるる様
そうですね、望みがないとやってられませんよね。
2020年までに、何かもう一つ治験でも良いので、チャンスが欲しいです。
目の不調もお辛いですね、お薬の副作用かもしれませんね。
今の主治医の先生に不信感を強く持たれているようにお見受けします。
難病ほど、主治医との信頼関係が重要ですから、セカンドオピニオンも考えられても良いかもしれません。

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プロフィール

ゆりりん

Author:ゆりりん
1962年生まれの56歳、京阪神に生息。
2014年12月末にIPFの告知を受けてから、経過と探求の日々を綴っています