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402. 血清マーカー

マーカー自体にはあまり重きを置いてこなかったのだが、Tatiさんの「間質性肺炎メモ」https://ameblo.jp/tayan0921/entry-12302977156.htmlで、納得するところがあったので、今回少し、これを読み解いてみたいと思う。

血液検査のマーカーは、「間質性肺炎」と他の病気との区別をつけ正しく診断するためにはかかせない。
ただ、このマーカーと肺線維症の『重症度』とは一致しないのだ。 線維化がすすんで定着してしまうと逆に数値は安定したりする。
それでは、間質性肺炎の病気の『活動性』とマーカーは一致するかというと、一致するタイプもあるし、一致しないタイプもある、というあいまいな回答になる。

間質性肺炎の血清マーカーとして使われるものに、KL-6、SP-D、SP-A、LDHなどがある。これらはヒトの細胞内に普通にある分泌物で、これが高い濃度で血液中に現れると、何らかの異常が起きていることになる。

一番分かりやすいLDHで説明しよう。
LDHはあらゆる臓器細胞に含まれている酵素で、臓器細胞が壊死すると、血液中に流れだす。まさに臓器破壊のマーカーだ。
だが、肺だけにある酵素ではないため、間質性肺炎の患者のLDHが上昇したからと言って、間質性肺炎が進行しているとはならない(私の場合は膵炎の発作後LDHが上がったが、落ち着くと下がった)。 
他の臓器でも起こるので、間質性肺炎の判断には使いにくい。これがすなわち「特異的でない」という意味だ。

KL-6は、肺に特異的だ。 II型肺胞上皮細胞に普通にある体内分泌物で、間質性肺炎のように上皮細胞の形成が過剰になると(それが吸収されないと肺胞壁が肥厚化する)、それに伴いこの分泌物も肺胞内に増える。だから肺胞内のKL-6の量と「病気の活動性」という面では確かに比例する訳だ。(肺がんを発症していないとしての前提)
ここにKL-6が900の人と1,500の人がいるとして、1,500の人の方が「肺胞壁の肥厚化」がより活発に起こっているかというと、それは一概には言えないのだ。そこに「血中への浸潤」というキーワードがある。

そもそも血液検査だから、その肺胞内の分泌物がいくら多量にあったとしても、血液の中に移動(浸潤)していかないとマーカーとしては上昇しない。
肺胞細胞が炎症を起こすことで、隣接する毛細血液への浸潤が加速する、これが鍵だ。

炎症が引き金になり間質性肺炎が進むタイプはストレートにKL-6が高くなるし、炎症を伴わないタイプ(典型的なIPF)は、KL-6は1,000以下であることも多い(私はこのタイプ)。
もちろんIPFでも、感染や過敏性アレルギーを伴う場合は、炎症を起こすのでKL-6は上昇する。

さて「線維化がすすんで定着してしまうと逆に数値は安定したりする」と先に書いたが、これも血管への浸潤が鍵だろうと思う。
完全に線維化してしまった部分は、傷口がかさぶたで覆われた状態(瘢痕化)と考えてもらえば分かりやすいだろう。すでに過剰形成は終わっていて、またKL-6は厚い壁に阻まれて毛細血管の中には流れこまない、あるいは毛細血管自体が退化してしまっているのではないかと想像する。だからKL-6が低く出たりするわけだ。

次に、SP-DとSP-A。ともに肺サーファクタントたんぱく質の種類で、基本的な役割は、肺胞を健全に膨らませておく、脂質とたんぱく質のミックスである。
下図を少し拝借して説明してみる。
図

肺胞は膨らんだり縮んだりして、空気の出し入れをしている。肺胞にとって一番困るのは、ぺしゃんこに潰れてしまうこと。 この膨らみを調整するのが肺サーファクタントたんぱく質で、肺胞の内側に脂分を含んだ薄い膜をはることで、その膨らみを維持する。
SP-DとSP-Aはこの基本的な役割に加え、マクロファージとも連動して免疫活動にもその役割を持つと言われている。
ただその全貌や、どのようにして肺から血液中に移行するのか、という詳細については明らかになっていない。
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/038030157j.pdf

増悪時にSP-DとSP-Aが明らかに上昇する人もいれば、そうでない人もいる。
またSP-Dが高値でもSP-Aは低い、と二つのマーカーに相関性が認められないということも、それが何故なのかは解明されていない。http://web.sapmed.ac.jp/im3/research/f1dnqs00000000h6.html#s1

ここまでのことで言えるのは、SP-DやSP-A、KL-6やLDHといった血清マーカーの急激な上昇が起きている場合は、肺内で起きている異常へのアラームとして注意を払う必要がある、ということだ。
けれども逆は真ではない。数値の上昇がないからと言って大丈夫だということにはならないのだ。

レントゲンやCTは、急性的に起こる増悪や感染には感度が良いが、じわじわと進行する線維化については、ある程度きっちり線維化してしまわないと分かりにくい。つまりタイムラグが生じるだろうと考えている。
やはり自分の体の声を聞くこと、これが一番重要だろうと思う。


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コメント

No title

ゆりりん様
拙いメモを判りやすく解読して戴きありがとうございます。
数値は単体でみても無意味、長期のデータ蓄積が大事というのが判ります。
不明部分が多いので本人の体感に頼るところも大きいですね。
さすがです。

No title

私の血液検査にSP-DとSP-Aが含まれていません。何でかな?と不思議に思ってました。主治医が診断に必要ないと思っているんでしょうか?KL-6は600台ですから典型的なIPFですよね。CTでの比較が一番の診断基準のようです。

Re: No title

tati様
コメントありがとうございます。
KL-6のことを誤解してらっしゃる様子の方が多いので、書き出したのですが、結構時間かかってしまいました。
とっつきやすいように、今回は文体も変えてみました。
色んな人が読んでくれるといいな。

Re: No title

がみさんも、そうなんですか。私も1回測っただけのようです。「検査中」とだけ書いてあって、その後の数値もプリントアウトしてもらってないので、さっぱり自分の数値が分かりません。別に分からなくていいやと思っていますが。
そうですね、がみさんは典型的かもしれませんね。ベストの治療選択をされていると思っています。

貴重な情報助かります!

夫の場合3つの中でSP-D(だけ)が高いのです。
そこでゆりりんさんファンの私、呼吸器科の主治医に、

「ということは? 炎症がないのに肺のモヤモヤだけが広がっている状態ということですか?」とためしに聞いてみたのです(知ったかぶりして)。

そしたら案の定、「そういう事です。だから(=SP-Dが低いからといって)目が離せないんですよ。ちょっとしたウイルス感染なんかで一気に進むことがあるのでね。ちゃんと毎月来て診せて下さいよ!」とのお答え。

もう速効でインフルエンザの予防接種を予約しましたね。(夫はイヤだ、必要ないというので取り敢えず私だけ)

セルベックスは「ネズミに効いたんだから絶対に効く、飲むべし!」とネズミ好きの主人を説得して飲んで貰ってます。(幸い同じ先生が処方してくれました。こちらからは何の説明もせず「セルベックス下さい」と言っただけで即OKでした)

何というか…家族である私としては出来るものなら自分の体で人体実験したい位なのです。もどかしい思いです。

訂正です

訂正 誤) SP-Dが低いからと言って
   正) KL-6が低いからと言って  でした。

Re: 貴重な情報助かります!

ちか様
血液のリモデリングのところで、コメント下さっていた方ですね。
だんな様は、今は落ち着いておられるご様子で何よりです。
マーカーについて書いたことで、少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。
ちかさんが、だんな様に良くなって欲しい、というお気持ちが伝わってきます。
でも、あまりスパルタにはしないであげて下さいね。
この病気、結構心が弱くなるのです。

よろしければ。

ちか様、今はこちらで書いています。https://ameblo.jp/kinseymil/
内容はまったくこのブログとは違いますが、よろしければお暇つぶしにどうぞ。

ありがとうございました

匿名希望の方へ
状況を詳しくご説明下さり、ありがとうございました。
私も膵炎と間質性肺炎が同時診断だったので、大変参考になります。
私は自分が脂質分解能力異常の遺伝子を少し持っているのかな、と思っていました。
良い三連休をお過ごし下さい。

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プロフィール

ゆりりん

Author:ゆりりん
1962年生まれの56歳、京阪神に生息。
2014年12月末にIPFの告知を受けてから、経過と探求の日々を綴っています

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