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386. 進行性肺線維症という概念 その3

進行性の最終段階が急性増悪である。
辛い内容だが、これを避けて通るのは偽善でもあるし、あえて書こうと思う。

急性増悪への治療内容は、人工呼吸器の気管挿入、ステロイドパルス、免疫抑制剤、直接血液浄化(PMX-DHP)、広域抗菌剤、抗線維化薬、モルヒネ、鎮静薬等。これらの使用の可否やそのタイミングについて、専門医間のコンセンサスも、ガイドラインも確立していない。

グローバルな呼吸器学会で優位になっている考え方は、要約すると以下となる。
・急性増悪とその他の増悪が混同して使われており、明確な定義づけが必要(記事242. AE治療—一歩リードかガラパゴスか?)
・挿管は死亡率を下げない(記事59. 挿管は要らない)
・ステロイドパルスの有効性に懐疑的。だが使用を否定するまでには至っていない

私は急性増悪とは、「肺線維化が非常に進行した状態で(記事334. 肺線維症のステージ)起きる、肺の最終的な”内部崩落”である」と考えている。肺の内部環境(肺の委縮、毛細血管の損失、肺内の分泌物など)があるエンドポイントに到達した時に自ずと起きるもので、感染症などの外部要因による炎症で起きる増悪とは全くの別物である、と考えている。
延命はできるが回復はほぼのぞめない。

逆に言えば、肺機能がある程度保たれている状態では急性増悪は起きない。
それ以前のステージで起きる呼吸困難は“増悪”ではあるが、感染症などの炎症によるか、あるいは線維化の進行が加速した時に引き起こされる“小崩落”だと考えている。
これらには、急激な炎症をステロイドパルスで鎮静する、広域抗菌剤を投与する、抗線維化薬で線維化の勢いを緩める、というような治療も有効だろう。
ステロイドパルスは人によっては大腿骨壊死などの重篤な副作用を起こすこともある。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1m07.pdf
肺機能はある程度温存できても、退院後の生活で、骨の損傷からくる痛みや車椅子の生活を余技なくされる可能性がある。
不利益と得られる利益をよく考えての決断が必要だ。

急性増悪で入院して死亡するまでの日数は、先達のブログの終了(家族からのお知らせ)を読む限り、人によってさまざまだ。
1日の人もあれば、30日以上に及んだ人もいる。これを治療効果と考えるか、延命と考えるか、は人によってさまざまだろう。

緩和ケアとしては、モルヒネは呼吸中枢を抑制するので、ある程度覚醒した状態を保ちながら呼吸困難感も和らげることができそうだが、呼吸抑制もあるので命を縮めることへの覚悟は必要だろう。鎮静はその施術の深さにもよるが、大抵は意識がなくなり、苦しみからは解放されるが、最後の手段だ。
最近少し宗旨替えしそうになっているのは、PMX-DHPの使用だ。これは敗血症への治療として行われる高度医療で、自分の血液をろ過して戻す治療だ。ケーススタディとして「有効」との報告も何件が出ている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/17/3/17_3_309/_pdf
究極の延命なのだが、理論的にも効果がありそうな延命ならばやってみようか、と最近妙に前向きになった自分がいる。
これはブロ友さんの勇気の伝播だ。

急性増悪時の対応を、事前にしっかり主治医や家族と話し合う。
そこに共通理解ができれば、自身の生き方を貫き、最後まで自分の人生へのコントロール権を全うできる、それが可能な疾患だと思うのだ。



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2017.10追記: IPFと告知されてから、急性増悪時にどうしたいか考え続けてきました。ステロイドパルスについての疑念を何度も書いてきており、それは現時点までぶれることはありませんでした。昨今「がんで死にたい」という趣旨の本やコメントをよく見かけます。がんは予後が非常に読みやすく、うまく管理すれば苦しいのは本当に最後の3週間くらい。その間も緩和ケアを手厚くすれば、自力でトイレにも最後まで行ける病だから、というのがその理由です。ですが治療方法の選択を間違った場合、その予後の苦しみは大きく違いが出るようです。
間質性肺炎は発症年齢やその他の疾患を抱えているか否かによって状況は変わると思いますが、一般的に発症する50~60歳代の場合、がんに較べて与えられる余命は長く、自身の人生をコントロールするチャンスを与えられている疾患だと思います。
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コメント

No title

おはようございます この数回、私が「否認」(知っていて知らない振り)しそうになる現実を冷静に分かりやすくまとめていただいております。感謝します。

Re: No title

ken様
3回に分けて書きましたが、その3は賛否両論あると思っています。
自分自身のこれまでの総括として書いてみましたが、そのように言って頂けると有り難いです。

急性憎悪について

ゆりりんさん、こんばんは。

急性憎悪の解釈、なるほど!と思いました。
密かに、この先に自分に感染が無かったら、どうなるんだろうと思ったいたからです。

肺の崩壊で最期を迎えるより、心臓がついてこれず、最期を迎える方がすっと逝けるんでは…などと不謹慎かもしれないですが、考えています。
そんなカンタンな問題でもないのかも知れませんねσ(^_^;)



Re: 急性憎悪について

ふるふる様
分かります、心不全ですっと、ということですよね。
「たゆたえど、沈まず」というブログの茂吉さんが、そのような逝き方をされました。
https://blogs.yahoo.co.jp/mosaku814/39997460.html
(確かこの方のことは、オアシスさんに教えて頂いたのだったと思います。)

肺の崩落は、どうなんでしょう。
延命しないで緩和ケアをすぐやってもらえれば、苦しみは少なくてもすむのでは、と思っていますが。



No title

ゆりりん様
このシリーズは過去記事と違う感覚で読ませていただきました。
以前の貴記事から拝借すると
「血管リモデリングシリーズ」で述べられたことや
「不調が毛細血管の異常から起こるとするドミノ説は・・・・」の一文は、
まさにこのドミノ倒しが短時間で起きることが急性増悪でしょう。
またまた、勉強になりました。
血液のアルカリ性維持が急性増悪防止繋がるのではと思いついています。

ひとつクレームを「その2 肺胞と毛細血管のメロンの例え」・・・
小生、メロンアレルギーです。思わず想像してしまいました(笑)
今後もよろしくお願いします。

No title

こんばんは。3回の記事、拝読させていただきました。
過去の記事も読み進めています。
でも、ほとんど解読不可能です。
少しずつ理解の幅を広げていきたいと思っています。

自分の今の状態がどの程度なのか、この病気に関しての血液検査も
初めてやりました。結果はまだです。かかりつけ医は、普通のクリニック
なので、このままで良いのか? などなど、、、不安や迷いが出てきて
思考の先が見えてきませんが、焦らず行こうと思っています。
また、よろしくお願いします。

Re: No title

さくら様
長井苑子先生の「間質性肺炎・肺繊維症」の本をお薦めします。
私も告知されてすぐに読みましたが、今読み返してみても必要なことはすべて網羅されています。
私の記事は、英語での最新論文を読み進めてきたものなので、マニアックなところがあります。
一日一つ読んで頂けるような量の記事を書いてきました。まとめて読むと吐きそうになると思います。
また気軽にお立ち寄り、コメント下さい。

Re: No title

tati様
ありがとうございます。
今回の記事は、これまでの総集編のつもりで書きました。
これからも色々と肺線維症についての発見があり、創薬があり、この記述が塗り替えられていくことを祈っています。
メロンの件、うまい比喩だと自賛していたのですが、tatiさんがアレルギーだったことを失念していました。
失礼致しました。

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プロフィール

ゆりりん

Author:ゆりりん
1962年生まれの56歳、京阪神に生息。
2014年12月末にIPFの告知を受けてから、経過と探求の日々を綴っています